
このページでは、粘土の基礎的なことから粘土に関するトピックスまで、様々なことをできるだけ簡単に、分かり易く紹介して行こうと思っています。何か質問や間違いがありましたらメールにてお知らせください。
油粘土
もっとも身近な「粘土」だと思います。主に土を原材料にし、油を混ぜて作られる粘土です。合成樹脂(プラスチック)と油(有機バインダー)を混ぜて作る「樹脂(プラスチック)粘土」や、パン粉や小麦粉に油を混ぜて作る「パン粉粘土」などもありますが、これらには「粘土」が入っていません。
「パン粉粘土」は家庭でも作ることができます。小麦粉にサラダ油を少しずつ加えていきながらよくこねると簡単にできます。
紙粘土
パルプ(木から取れる紙の原料)に油を混ぜることでできます。形を作ってから乾燥させると、水分がなくなることでパルプが固まって形が変わらなくなります。
銀粘土(シルバークレイ)
銀の小さな粒子と有機バインダー(油のようなもの)を混ぜて作ります。形を作った後で900℃以上の高温で焼くと有機バインダーと水が蒸発し、純度が高い銀になります。シルバーリングなどの銀細工に多く用いられています。
@性質による定義この二つの分類は無関係でなく、@の性質とAの粒子の大きさは密接な関係があるため、一般に粘土に分類されるものは、この二つの定義を両方とも兼ね備えています。
「非常に小さな粒子が集まったもので、水と混ぜ合わせた場合に粘性や可塑性が現れ、高い温度で熱すると焼き固まるもの」といった性質による定義。陶器などを作る窯業の分野から見た定義といえます。
A粒子の大きさによる定義
「粒子の大きさが 0.002 mm(2 μm)以下の微粒子」といった粒子の大きさによる定義。土壌学、土質工学などの分野から見た定義といえます。
目次に戻る Homeに戻る粘土(カオリンという名前)を粒子を走査型電子顕微鏡(電子線を用いた顕微鏡で、普通の顕微鏡より小さなものまで見ることができる)を用いて、約7万倍で撮影した写真です。六角形状の薄い板のようなものがいっぱいあつまっでいるのが分かります。この小さな粒子一つ一つが粘土の主成分である「粘土鉱物」(カオリンの場合はカオリナイトという)であり、これら粒子や他の粘土鉱物、不純物(有機物・鉱物など)などが混ざり合って、目で見える形になったものが「粘土」なのです。分かり易く言えば、「目に見えないほど小さな粘土鉱物がいっぱい集まっている土」が粘土といえます。
陶器(茶碗・湯のみなど)
これは特に説明も要りませんよね。実際にろくろで粘土を回しながら形を作り、窯で焼いて茶碗や花瓶などを作る「陶芸」を見たこと、やったことがある人も多いと思います。おそらくこれが人間が粘土を初めて使った物で、日本では縄文式土器・弥生式土器に始まり、有名なところで有田焼・九谷焼・信楽焼き(趣味が入るので偏ってるかな?)などなど日本全国で作られています。
これら焼き物は、第一話で説明した「熱すると焼き固まる」という性質を利用した非常に特徴的な例だといえます。
鉛筆・色鉛筆
「どこに入ってるの?」なんて思ってる人がほとんどでしょうね(笑)。実は鉛筆の芯には粘土が10〜55%も粘土が入っています。鉛筆の芯は黒鉛(グラファイト)と粘土をよく混ぜ合わせ形を整えたあと、約1,000度で焼くことで作られています。紙などに鉛筆で文字を書くと、やわらかい黒鉛が少しずつ剥れて紙の上に残ります。この紙の上にくっついた黒鉛が文字や線になって見えるのです。しかし、黒鉛はわらかく、芯の形を作ることが難しいので、粘土を入れることで固めています。一般に良く使われているHBの鉛筆で大体30%は粘土が入っています。粘土が多くなればその分硬くなり(H〜9H)、粘土が少なくなれば柔らかくなります(B〜6B)。
また、色鉛筆にも粘土が入っています。色鉛筆には黒鉛の変わりに顔料(色をつける粉。食紅のようなもの)と粘土が入っていて、顔料が熱に弱いためにロウ(ロウソクの成分)を加えて固めています。色鉛筆にはだいたい40〜60%の粘土が入っています。
最後にシャープペンシルの芯です。残念ながら(?)シャープペンシルの芯には粘土は入っていません。シャープペンシルの芯は鉛筆に比べ細いために粘土では硬さがたりず、粘土よりも固い芯を作れるプラスチックを混ぜています。しかしプラスチックは人工的に作らなくてはいけなく、時間・コストがかかります。そのため鉛筆では、天然に多くあり、安く、環境にも優しい粘土を使っているのです。
石けん・シャンプー
石鹸やシャンプーなどの人の体を洗う「洗剤」にも粘土が入っています。洗剤の中での粘土の役割は2つあり、それぞれの用途に合わせた粘土が使われています。
一つは汚れをかき出す役割です。前にお話したように粘土は非常に小さな微粒子です。この微粒子が洗剤中にあることで、毛穴などの奥まったところにある汚れをかき出してくれます。引き戸や窓などの桟にたまったホコリをほうきでかき出すようなイメージです。粘土がとっても小さなほうきやたわしとなって汚れを落としてくれるのです。この役割を果たす粘土は、水と混ざったときに粒子の形・大きさなどが変わらない必要があるため(水に溶けてしまうほうきは使い物になりませんよね)、カオリン(主要鉱物名:カオリナイト)と呼ばれる粘土が良く使われます。
もう一つは保湿効果です。これは主に女性向けの話(笑)。洗顔やシャンプーをした後、肌・髪の保護や美しく見せるために適度な水分があることが重要になってきます。しかし、何もしなければ肌や髪についた水はどんどん蒸発してなくなってしまいます。そこで、石鹸やシャンプーの中に水を良く吸う粘土を入れておくと、肌や髪に粘土の薄い膜ができて長い間みずみずしさが保たれます。この役割を果たす粘土は水を良く吸う粘土が使われ、ベントナイト(主要粘土鉱物:Na-モンモリロナイト)などの粘土が入っています。この用途としては、石鹸・シャンプーのほかに入浴剤・ベビーパウダーなどにも使われています。
オムツ
これは上で述べた石鹸・シャンプーの2番目の理由と一緒です。粘土(ベントナイトなど)の優れた吸水性を利用して、赤ちゃんの尿を漏らさないようにします。粘土は自然に存在する土・砂の仲間ですから、誤って食べてしまったときの体への影響が少ないため、赤ちゃん用の製品に用いるのも安全なのです。
入れ歯安定剤
これは最近知りました。某有名入れ歯安定剤のCMで「ベントナイト配合」とやってました。「ベントナイト配合」って聞くと「なんだかすごそうだな〜」とか「よさそうな成分が入ってるみたい」と思う人が多そうですが、「ベントナイト=粘土」です。いや、実際高い効果があるからベントナイトを入れてるのでしょうが、「粘土配合」と書いたらなんだかあんまり売れなそうだな〜。CMのキャッチコピーの勝利です(笑)。上でも書いたように、粘土は毒性が低いため、口に入れる入れ歯安定剤に使っても安全です。
紙
「こんな薄い紙のなかのどこに入ってるんだ?」って思う人が多いでしょうね。前に書いたように粘土の粒子の大きさは0.002 mmです。紙の厚さは0.1 mm程度はあるので、粘土の大きさは紙の厚さの約50分の1。粘土が入っていても見えません。紙の中にはカオリン(カオリナイト)やタルクと呼ばれる粘土が入っています。
和紙をのぞくほとんどの紙は「パルプ」と呼ばれる木材から得られる原料を基に作られています。しかしパルプだけで紙を作ろうとすると、パルプの塊が大きいため、隙間ができ、表面がでこぼこしているものしか作ることができません。この為、パルプから作られる紙の中にはその性質を補う様々な物が入っています(パルプ同士を強く接着させる接着剤など)。
粘土の役割は大きく分けて2つあります。一つは、パルプの隙間を埋めて均一な紙にすること。もう一つは、紙の白色度を増すこと、つまり紙を白くすることです。紙に粘土を混ぜると、光が様々な方向に反射され(散乱)、紙自体が白く見えます。
「粘土が入ると黒くなるんじゃない?」と思われる方も多いでしょう。ところが、ある種の純粋な粘土は白いのです。左の写真は純度の高いカオリンです。ね、白いでしょ?土と粘土はぜんぜん違うのですよ。
医薬品
怪我や病気の際に用いる薬にも粘土が入っています。ベントナイトやカオリンなどの粘土は、皮膚のただれや傷口に塗ることによって外気から遮断し、傷口を保護する働きを持ちます。ベントナイトは水をよく吸う粘土で、水や体液を吸着することで患部の冷却効果を有します。また、カオリンは体液などをよく吸着し、止血や患部の衛生化の働きをします。
これらは主に塗り薬・湿布剤としての役割ですが、この他飲み薬にも利用されています。上述の通り、ベントナイトやカオリンは他の物質をよく吸着することができるため、胃や腸で体に悪い有害物質などを吸着し、閉じ込め体外に排出する役割を果たします。また、レントゲン撮影に用いる硫酸バリウムの安定化剤などとしても使われています。
最後に最近のトピックスを一つ。例えば、腸の内服薬を口から飲んだとして、薬が腸に達して有効に働くまでに胃で吸収されてしまう分があります。また、頭痛薬を飲んでも、薬に働いて欲しいのは頭ですが、薬が体内に吸収されるのは胃腸であり、頭に達するまでに時間的・量的ロスが発生します。また、薬は体の異常を改善したり、ウイルス等を抑える働きをするものなので、正常な体には悪影響を及ぼす可能性があります。皆さんは風邪薬を飲んで胃の調子を悪くしたことはありませんか?これはその一例で、風邪の症状を抑える薬が胃の粘膜を傷つけてしまうからです。このことから、薬を体内の必要な部分に輸送し、患部でのみ働かせようと言う「Drug Derivative system(ドラッグ・デリバリー・システム; DDS)」の研究が盛んに行われています。これは薬を有機ポリマーや無機構造体などに包摂し、患部で薬を放出させようという試みです。これには層状複水酸化物(LDH)という粘土の仲間(アニオン交換性粘土と呼ばれる)が用いられており、例えば腸薬を飲み込むと胃酸などの酸で時間とともにLDHが溶け出し、腸で放出されるといったものです。
これら医薬品に粘土が用いられるのは、粘土の持つ性質(吸着性)や安価であると言ったことに加え、体内に入っても有害でないという性質が有効に活用されている一例です。
化粧品
粘土は、その他の物質をよく吸着するという性質から化粧品にも古くから使われていた。イギリスでは17世紀にはドラッグストアーに化粧品用の粘土が並んでいた。日本でも力士が髷に使う鬢付け油の洗剤として粘土が古くから使われていた。
今でもファンデーションや乳液などに多くの粘土が使われている。これらは紫外線から肌を守ったり、肌を白く見せたりと、その用途にあった粘土がそれぞれ用いられている。化粧品に良く用いられている粘土はタルクといい、非常に滑らかで蝋のような感触を有している。その、滑らかさややわらかい感触から、ファンデーションや口紅など幅広く用いられている。
プラスチック
プラスチックは石油などを原料に作られる有機高分子(ポリマー)の一種であるが、それらの性質を改善するために粘土が一役買っている。粘土と有機ポリマーの複合体をクレイーポリマーナノコンポジットといい、その機械的強度(硬さや引っ張り強度など)、ガスバリア性(空気などから守る)、熱的安定性などが大幅に向上することが知られており、現在多くの研究がなされる中、様々なプラスチック製品への応用がなされている。
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